2010年 新春特別展「朝鮮 虎展」1月9日(土)~2月14日(日)
 

左:伝李公麟画 虎図(16世紀後半)正伝寺所蔵
右:伊藤若冲画 竹虎図(18世紀末)鹿苑寺所蔵

2010年新春特別展「朝鮮 虎展」

2010年1月9日(土)~2月14日(日)

開催趣旨

 朝鮮半島の虎は、古来人々と深く関わり、虎を題材とする民話や美術工芸品が今日に伝わっていま す。山神信仰により仙人の使いとして虎を描いた「山神図」や、報喜を意味するめでたい図像としての「鵲虎図」は、正月の吉祥飾りとして用いられました。これらの資料からは朝鮮の自然から芽生えた民族性を知ることができます。  また、日本の人々にとっては、自国内に生息しない虎は早くから人々の興味の対象となり、江戸時代には絵画の一つの画題として多く取り上げられています。伊藤若冲(1716~1800)の描いた鹿苑寺の「竹虎図」は正伝寺に伝わる「虎図」をもとに作画されたものであることはかねてより知られるところですが、近年の調査でこの虎の絵が朝鮮半島で制作された可能性が高いといわれるようになりました。このたびは若冲の描いた竹虎図と正伝寺の伝わる虎図が一堂に会する、貴重な機会であり、報恩寺や妙心寺が所有する中国の虎図や朝鮮通信使画員が描いた虎図などもあわせて出品します。  寅の年を迎える2010年。本展では、朝鮮のシンボル的な存在である虎にスポットを当て、日本との関係にも迫ります。

開館情報

 ■会 期    2010年1月9日(土)~2月14日(日)※32日間
 ■開館時間   午前10時~午後5時  ※入館は午後4時30分まで
 ■休館日   月曜日、1/12(火) ※1/11(月)は開館  
 ■入館料   一般800(640)円、大高生600(480)円、中学生以下無料

 (  )内は20名以上でご来館の団体割引料金です。
 また、事前のご予約にて団体解説も承っております。
 詳しくは高麗美術館(電話075-491-1192)まで。

 ■主な出品作品  ・中国の虎の絵・・・鳴虎之図、子連虎図
 ・朝鮮の虎の絵・・・虎図、龍虎図、山神図、鵲虎図
 ・朝鮮通信使と虎の美術・・・松下虎図、嘷虎図、朝鮮通信使絵巻
 ・日本で描かれた虎の絵・・・若冲画竹虎図、光琳画竹虎図
 ・民俗資料にみる虎・・・虎文枕隅、白磁竹虎文筆筒         など約40点
 ■主  催  財団法人 高麗美術館
 ■展示協力  石川県立美術館、大阪市文化財協会(辛基秀コレクション)、大阪歴史博物館、京都国立博物館、京都市動物園、京都府立総合資料館、京都府立文化博物館、国際環境NGO FOE Japan、相国寺承天閣美術館、正伝寺、多摩動物公園、天理大学附属天理参考館、東海庵、財団法人 東京動物園協会、株式会社 虎屋、ベルリン国立アジア美術館、報恩寺、鹿苑寺、両足院、個人所蔵家。

主な出品紹介

※展示替えがございます

虎図(伝李公麟筆 朝鮮時代16世紀後半)
正伝寺蔵

展示期間:1/9(土)~1/17(日)
       2/2(火)~2/14(日)

 伊藤若冲の描いた虎の図の原画とされる元来中国絵画とみなされてきた虎の絵。 近年の調査で朝鮮絵画である可能性を指摘された逸品。 正伝寺は高麗美術館より西北へ約3キロに位置する臨済宗南禅寺派の名刹。



竹虎図(伊藤若冲画 江戸時代18世紀末)
鹿苑寺蔵

展示期間:全期間
伊藤若冲(じゃくちゅう)(1716~1800)は狩野派のほか、手本を宋元の古画にもとめ、臨摸することが極めて多く、その背景には相国寺第十三代住持・梅荘顕常(1719~1801)との友好関係を見逃すことはできない。この絵を所蔵する鹿苑寺は金閣寺の愛称をもつ、臨済宗 相国寺山外塔頭。
若冲はこの竹虎図とほぼと同一の図像をもつ絹本著色の虎図(エツコ&ジョー・プライスコレクション)も描いており、それには本来であれば実物から写生したものでなければ描かないが、日本には虎がいない為に南宋の画院画家毛益(*正伝寺の虎図は伝李公麟筆という伝承をもつ)が描いたものとして正伝寺に伝わった虎図に従って制作したという背景が知られている。



 

嘷虎図(李義養筆 1811年)
両足院蔵

展示期間:1/19(火)~2/14(日)
江戸時代最後の文化年間に来日した朝鮮通信使画員・李義養(リ・ウィヤン)の描いた虎の絵。嘷虎(こうこ)とは吠える虎のこと。国書改ざん事件発覚ののち、文書の取り扱いには京都五山の碩学僧が輪番で行った。碩学僧は対馬・以酊庵へ数年の任期で向かい、対朝鮮外交の一翼を担った。両足院は臨済宗建仁寺の塔頭。建仁寺は京都祇園に位置する京都五山の一つ。



竹虎図(尾形光琳筆 江戸時代18世紀)
京都国立博物館蔵




鳴虎之図(四明陶佾筆 明時代15世紀)
報恩寺蔵


展示期間:1/13(水)~2/14(日)



龍虎図(李楨筆 朝鮮時代17世紀)
高麗美術館蔵

16世紀末に図画書の画員として活躍した李楨(イ・ジョン)の作品。李楨は画員の家系に生まれ、5歳で画才をあらわし、10歳にして絵を大成させた人物である。しかし依頼されても揮毫することはなく、当時でさえ世に伝わるものはわずかであった。脱俗不凡で仏教にも深い理解があったが、わずか30歳の若さで夭折した。
「懶翁」の落款と「懶翁」「神閑意□」の朱文方印があり、現存作品の少ない李楨の作品として貴重である。
 徳川幕府の御用絵師だった狩野探幽(1602~1674)が目利を乞われ、岩国藩吉川家所伝の懶翁の落款を持つ龍虎図に接し、書面を残している。そこには南宋の陳容(所翁)と一類の画家であると記されている。また、現在ベルリン国立アジア美術館の所蔵となる縮図『筆園佚遊』にはこの「龍図」が描かれており、探幽がたしかに本作を目にしたことがわかる。



【参考図版】<筆園佚遊>龍図 (狩野探幽筆)
ベルリン国立アジア博物館蔵




鵲虎図 19世紀  紙本墨画淡彩 高麗美術館蔵

 虎(豹)とカササギを描いた鵲虎図。鵲虎図は吉兆を意味したおめでたい図像であり、新年に家々で飾られたものである。鵲虎図は中国にその淵源が求められる画像であり、吉報を意味するカササギと「報bao 」と音通である「豹bao」がセットされ、「報喜」の意味を持つものとして親しまれた。朝鮮の鵲虎図は豹が虎としても扱われ、斑の毛皮をまとった虎は画題の真意を継承したものといえる。