2009年春季企画展「きらめく朝鮮の技-螺鈿漆器と象嵌青磁」2009年4月3日(金)~6月28日(日)
 

黒漆塗螺鈿花鳥文箱(19世紀)当館蔵

開催にあたって

 このたび当館では、螺鈿漆器を中心とする展覧会を実に18年ぶりに開催いたします。 古来朝鮮で受け継がれてきた装飾技法に、素材を埋め込むことで文様を表した螺鈿と象嵌があります。ほぼ同時代に隆盛を極め、朝鮮を代表する装飾技法として定着しました。
 漆器にみられる螺鈿は、文様の形に切った貝を木地に貼って漆を塗り、研ぎ出したものです。日本の正倉院宝物として知られる唐の螺鈿鏡との類似品が朝鮮でも出土しており、ともに中国の螺鈿技術を礎としたことがうかがえます。その後、日本においては蒔絵と併用する形で螺鈿が用いられましたが、朝鮮では一貫して螺鈿のみを追求し、それぞれ固有の発展を遂げました。
 一方、高麗青磁にみられる象嵌は、器面に鏨(たがね)などで文様を彫り込み、素焼きして白土や赤土を埋め、釉薬を掛け再び焼いたもので、高度な技を必要としました。

 今展では、鮑(あわび)貝をはじめ玳瑁(たいまい)や鮫皮(さめがわ)も取り入れ、花鳥文や山水文などを装飾した朝鮮時代(1392~1910年)の螺鈿漆器をご覧いただけます。また菊や牡丹、雲鶴文などを象嵌で精緻に表した高麗時代(918~1392年)の青磁も併せてご紹介いたします。
 いずれも朝鮮の風土に培われた技のきらめきが伝わる優品です。 螺鈿漆器や象嵌青磁が作られる工程を辿りながら、自然の素材一つひとつの技に込められた美のこころを味わう好機会となるでしょう。

開館情報

 ■会 期    2009年4月3日(金)~6月28日(日)
 ■開館時間   午前10時~午後5時  ※入館は午後4時30分まで
 ■休館日   毎週月曜日、但し祝日と重なる場合は翌日休館。  
 ■入館料   一般500(400)円、大高生400(320)円、中学生以下無料

 (  )内は20名以上でご来館の団体割引料金です。
 また、事前のご予約にて団体解説も承っております。
 詳しくは高麗美術館(電話075-491-1192)まで。

 ■主な出展品  ・黒漆塗螺鈿蓮池亀文函
 ・黒漆塗螺鈿花鳥文箱
 ・青磁象嵌牡丹文扁壺
 ・青磁象嵌菊花唐草文壺
 ・銅製銀入糸香垸  など約60点

関連イベント


◆ミニ講座「高麗・朝鮮の螺鈿漆芸―その美と民族性」


講 師:河田 貞(かわだ さだむ)氏(当館評議員、奈良国立博物館名誉館員)

終了しました

朝鮮螺鈿工芸史研究の専門家をお招きし、朝鮮半島の螺鈿について分かりやすく解説していただきます。
日 時:4月25日(土) 14:00~15:00
会 場:高麗美術館
定 員:30名
料 金:無料(ただし入館料が必要)




◆ワークショップ「貝でブローチを飾ろう」

講 師:柴田 道雄(しばた みちお)氏(漆芸作家)

終了しました

展覧会観賞後、実際に薄貝片を使って、木製のブローチにお好きな図柄を描きましょう!
接着にカシュー塗料等を用いますので、当日は汚れてもよい服装でお越しください。

日 時:4月18日(土)
    <午前の部>10:00~12:30
    <午後の部>13:30~16:00
会 場:高麗美術館
定 員:各回15名
対 象:小学5年生以上
料 金:2800円

※上記イベントは事前予約制です。電話にてお申し込みください。 定員に達し次第、締め切ります。

お申し込み先<高麗美術館研究所>075-494-2238


◆学芸員によるギャラリートーク


日 時:5月16日(土) 14:00~15:00
会 場:高麗美術館 
申 込:不要
料 金:無料(ただし入館料が必要)

主な出品紹介

●黒漆塗螺鈿蓮池亀文函 19世紀
 朝鮮時代の螺鈿技法は、貝の殻を砥石で磨き減らして貝片を木地に貼り、その上から漆を何回も塗り、文様を研ぎ出す技法が多くとられた。  この函にはつがいの亀が泳ぐ蓮池と一群の雁が飛ぶ山水風景とが螺鈿技法によって表現されている。左右両側の山水図のなかには藁葺屋根のような建物が見え、山野に広がる朝鮮の原風景が想起される。



●青磁象嵌雲鶴文碗 12世紀後半
 透明感のある青緑色の器面内部には、唐草文帯で縁取られた天空に鶴が飛翔し、雲がたなびく流麗な様子を白黒象嵌で表している。象嵌で描かれた文様部分が少なく、余白を充分にとるのは、後の朝鮮時代の趣向ともつながる要素である。見込みの小さな鏡に花弁を、側面には蓮華を可憐に陰刻するなど、細やかな装飾を駆使し、全体に精巧な作調である。



●青磁象嵌牡丹文扁壺 13世紀
 口と底の縁には後補の金箔をやや残し、肩から裾にかけてなだらかな線を描く安定感のある扁壺である。上部に蓮弁文、中央部の二重稜花窓のまわりには如意頭文をめぐらせ、窓枠外の空間には均等に散りばめられた葉形を成す薄い雲間を鶴が飛翔する姿がみられる。画面に見立てられた窓枠内に咲く牡丹は、周りの天空を背景にくっきりと浮かび上がり、全体を引き締めている。確認されるなかで他に類例のない、希少な逸品である。