朝鮮通信使来日400年記念特別展「誠信のまじわり―通信使の息吹」2007年4月21日(土)~5月27日(日)
 

馬上才図 江戸時代 18世紀中期

開催にあたって

 春の展覧会は朝鮮通信使来日400年を記念する特別展を開催します。

 文禄・慶長の役(1592年~1598年)により、日本と朝鮮との国交は一時断絶しましたが、1607年に徳川政権によって国交が回復しました。その際に来日した朝鮮通信使は日本文化のなかに大きな足跡を残していきました。朝鮮通信使の来日に際しては対馬宗家が両国の間を取り持ち、その外交を一手に引き受けました。日本と朝鮮が交わした外交文書は両国の体面を保つため、宗家によって偽装されるなど、歴史の裏舞台では壮絶なドラマが繰り広げられました。今回は偽造された国書を中心に高麗美術館所蔵の通信使関連資料のほか、他館より多数の出展をご協力いただき、このたびの展示といたします。通信使の一団としてやってきた画員が書き残した墨画や通信使の京都での行列の姿をあらわした「洛中洛外図屏風」、通信使を象った日本の郷土人形も見どころのひとつです。
 
 このたびは江戸時代の日本と朝鮮との深いつながりを感じていただく貴重な機会です。ぜひとも高麗美術館をおたずねください。


開館情報

 ■会 期    2007年4月21日(土)~5月27日(日)
 ■開館時間   午前10時~午後5時  ※入館は午後4時30分まで
 ■休館日   毎週月曜日、5/1(火) ただし 7/16、9/17、9/24の月・祝は開館いたします。
 ■入館料   一般800(640)円、大高生600(480)円、小中生400(320)円

 (  )内は20名以上でご来館の団体割引料金です。
 また、事前のご予約にて団体解説も承っております。
 詳しくは高麗美術館(電話075-491-1192)まで。

 ■主な出展品 ・朝鮮国王李昖国書 (1607年)(京都大学総合博物館蔵) ※展示期間 4/21~5/6
・朝鮮国王李琿国書 (1617年)(京都大学総合博物館蔵) ※展示期間 5/8~5/27
・洛中洛外図屏風 (江戸時代中期)(渡辺美術館蔵)
・李賀騎馬図 金有声筆(1764年)(建仁寺 両足院蔵)
・京都御所東方公家屋敷群出土朝鮮通信使人形(江戸時代中期)(京都市考古資料館蔵)
・朝鮮通信使郷土人形(江戸時代後期)(さがの人形の家蔵)
・朝鮮通信使屏風(1996年 版画家 木田安彦 作         ほか約40点 
 ■後 援  財団法人 日韓文化交流基金、財団法人 京都市国際交流協会 


主な出品紹介


馬上才図 (部分)    紙本著色 江戸時代 18世紀中期 高麗美術館蔵
 座敷からは平服姿であらわされた侍衆や女性が馬上才を物珍しそうに見物している。馬上才とは疾走する馬上で倒立、横臥するなどの曲芸であり、曲馬騎手や馬の世話係は朝鮮通信使次官として来日している。家紋を抜いた垂れ幕のうしろにも見物する貴顕がつめており、その後方に通信使帯来の龍を描く形名旗や行道を清める清道旗がたなびく。

 本作は馬上才を題材とした肉筆画で、作者は代々歌舞伎の看板を製作する鳥居派一門の鳥居二代清信(1702?~52?)、および同時期に活躍した鳥居二代清倍(1706~63、鳥居二代清信と同一人物とする説もある)であると考えられる。18世紀の頃から見られはじめた「浮絵」の技法で巧みに遠近を表し、建物の部材が織りなすいくつかの条線を卓抜に映し出している。朝鮮の紗帽をかぶった馬上の騎手などのかもす雰囲気は柔和なものである。江戸時代と朝鮮通信使を知る好資料である。




鷺図    金明国筆・林羅山賛、紙本墨画、113.4×40.6cm 17世紀 高麗美術館蔵
魚をくわえ、水辺の葦のなかでたたずむ一羽の白鷺。
17世紀、朝鮮通信使の随行画員として来日した金明国
(1600~1662年以降)の作品である。1636年、および
1643年の通信使画員に選ばれた金明国は、当時日本で
たいへんな人気があった。一人の画員が二度も通信使に
加わる例はほかになく、その歓待ぶりがうかがえる。
金明国の遺した作品は僅か30点ほど。うちおよそ半数が
日本にある。この鷺図も金明国の稀少な作品のひとつで
あるが、何より江戸幕府の儒官であった林羅山(号は道春、
1583~1657)の七言絶句があり、さらに価値を高める。
林羅山は、1643年の通信使製述官であった朴安期(号は
螺山、1608~?)との交流が縁で金明国と知り合い、彼の
鷺図に賛を記したと推察される。



朝鮮通信使行列絵巻   紙本著色、全八巻 江戸時代 18世紀初期 高麗美術館所蔵
 この絵巻は正徳元年(1711)の朝鮮通信使の来聘において、前年に製作された琉球使節団の絵図をもとに仕立てたものとされ、時の老中・土屋相模守政直(1641~1722)が対馬藩・宗家に命じて描かせたものである。通信使の来聘の主な理由は将軍襲職の慶賀であり、また日本の情勢を探ることでもあった。一団は漢城(ソウル)から釜山を経て対馬、瀬戸内海を横断し、大坂より河舟に乗り換えて京までのぼり、京からは陸路江戸までをはるばるやってきた。毎回数百人を数えた大使節団を警護・接待し、万事無事に帰着させることが対馬藩をはじめ、各藩の任務であるため、こうした絵図が役立てられたのであろう。  この絵巻は宗家からの献上を受けて政直が所持していたものが、尾張徳川家の姫君が京都近衛家へ輿入れする際の道具となり、明治44年に民間へ出たという経緯を持つ。  朱で橘の紋を入れた箱のあとには儒学者・雨森芳洲(1688~1755)が「真文役」として描かれている。朝鮮語にも通じた芳洲であるが、朝鮮人との意思疎通には両国共通の真文、すなわち漢字が利用されたのであった。


    朝鮮通信使行列屏風(1996年)   版画家・木田安彦 作

特別関連イベント

 誠信のまじわり―通信使の息吹

 海を越えてやってきた使節団・朝鮮通信使が来日した1607年から数えて400年。本年は記念すべき年です。2007年高麗美術館特別展は通信使をテーマとして、館蔵資料のほか、館外よりも多数の関連資料を出展いたします。通信使の足跡より日本と朝鮮の深いつながりを感じていただく機会です。
このたびはその関連イベントとして朝鮮通信使に詳しい上田正昭高麗美術館館長(京都大学名誉教授)と仲尾宏高麗美術館評議員(京都造形芸術大学客員教授・朝鮮通信使縁地連絡協議会部会長)による対談「朝鮮通信使来日四百年の歴史的意義」と1978年に製作された「江戸時代の朝鮮通信使」の上映会を催します。多数のご来場をお待ちしております。



1978年当時のチラシ
■記念講演:朝鮮民俗芸能 サムルノリ
         [雨森サムルノリチーム「すずらん」](滋賀県高月町)

■記念対談:「朝鮮通信使来日四百年の歴史的意義」
        ・上田正昭 館長(高麗美術館館長、京都大学名誉教授)
        ・仲尾 宏 先生(高麗美術館評議員、
                        京都造形芸術大学客員教授)
■映画上映:ドキュメンタリーフィルム「江戸時代の朝鮮通信使」
                            (1978年、カラー50分)
■日   時:2007年4月28日(土)14時から16時
                           (受付は13時30分より)
■会   場:京都市国際交流会館 イベントホール
                           (電話075-752-3010)
■交   通:京都市営地下鉄東西線「蹴上」下車 徒歩約6分

■入 場 料:無  料

■予   約:不  要(席数221)

■主   催:財団法人 高麗美術館)