2006年春季企画展「舎廊房という空間―朝鮮男性の過ごした時間」2006年4月7日(金)~7月2日(日)
 

黒柿貼二層チャン 19世紀

開催にあたって

家屋とは、空間の集合体です。中国、朝鮮、日本は昔から近隣国として密接な影響関係にあるなかで、それぞれの文化を育んできました。気候風土や思想は人の生活様式に変化をもたらしますが、空間に対する認識は土地によってさまざまです。とくに性理学(儒教)を国の基本理念とした朝鮮王朝李朝。1392~1910)では、身分と問わず一貫した特徴がみられます。それは生活空間である家屋構造に著しく、儒教が人にどのように受け入れられ、理解されていたのかがうかがえます。

  舎廊房(サランバン)とは儒教を重んじた家主、男性の空間です。舎廊房の主人は学問に浸るかたわら、時には客人とを通わせ、囲碁や楽器に触れながら鬱蒼とした世界とは別の場所で過ごしました。

  舎廊房には目障りなものがほとんどなく、ごくわずかな装飾、あるいは素地の世界が広がります。木目を活かした家具調度品は線と面の美しさが際立ち、壁に飾った四君子などの書画は、思想と精神が反映されています。学問と向き合い、詩・書・画をたしなむのに欠かせない文房具は、とても素朴で可愛らしく、主人の部屋を特殊な空間に作り上げていきました。

  今回の春季展では朝鮮時代の舎廊房に注目し、男性とその空間を作り上げたモノ-陶磁器・絵画・木工品ーの特徴や独自性から、時代の一面を探ります。

開館情報

 ■会 期    2006年4月7日(金)~7月2日(日)
 ■開館時間   午前10時~午後5時  ※入館は午後4時30分まで
 ■休館日   毎週月曜日、但し祝日と重なる場合は翌日休館。  
 ■入館料   一般500(400)円、大高生400(320)円、小中生400(240)円

 (  )内は20名以上でご来館の団体割引料金です。
 また、事前のご予約にて団体解説も承っております。
 詳しくは高麗美術館(電話075-491-1192)まで。

 ■総出展数  約60点

主な出品紹介


山水図 二図一幅 (さんすいず)権敦仁画・金正喜画筆 紙本墨画 19世紀前半
 権敦仁と金正喜は、朝鮮時代末期の士大夫画家として名高い。特に金正喜は清の文人らとも通じ、”朝鮮の書聖”と呼ばれ、独自の筆法を考案している。また権敦仁は 金正喜とも親しく、彼もまた書の大家であった。
これは彼らの共同作品であり、上図が権敦仁の図、下図は金正喜の画である。小さな画幅ではあるが、文人としての彼らの気風を感じさせる秀逸な作品である。



冊架図 六曲一隻 (さっかず)紙本着色 19世紀
 舎廊房には大掛かりな装飾品である屏風は不似合いとされたが、朝鮮時代後期の文芸復興期には精錬された家屋や室内構造が促され、使用場所や用途によって多様な書画、刺繍の屏風が生み出された。
冊架図は文房図とも称され、積み重なる書帙や筆筒、花瓶などの調度品が独特の構図で描かれる。”文房”はもともと中国で生まれ、士大夫趣味が凝縮された書斎、および応接室である。そこには士大夫の傍らにあった文房具や喫茶具などが置かれ、その調度を絵にしたのが文房図である。
舎廊房の男性は学業成就や立身出世の願いを、この冊架図に託したとも考えられる。



青花辰砂蛙形水滴 19世紀
 水滴は硯に水を注ぐための道具である。文房具には陶磁製がかなりあるが、ほかの器物と異なり、水滴ほど形状と文様の豊かなものが類をみない。水滴は士大夫が丁寧に使い慣らしたものが数多く残り、愛らしい味わいに満ちている。