

朝鮮民画は、朝鮮王朝後期、一八世紀ごろから二十世紀初頭にかけて、名も知られぬ画工や庶民の手によって秒かれた絵画です。宮廷や両班階層が享受した院体画や文人画などの正統絵画とは異なり、婚礼や還暦、年始、祭祀といった暮らしの節目で用いられ、吉祥や厄除け、家族の幸せへの切実な願いが託されました。虎と鵲を描く虎鵲図、文字に徳目を込めた文字図、書斎の器物を並べる冊架図、不老長寿を祈る十長生図、そして山神や七星を描く巫俗画など、その画題は多彩です。技巧よりも率直な表現を重んじ、大胆な構図と鮮やかな色彩、時にユーモラスな造形によって、儒教・仏教・道教・シャーマニズムが重なり合う精神世界が生き生きと描き出されています。
これらの民画一枚一枚には、無病息災を願う親の心、家の繁栄を祈る主人の思い、災厄を遠ざけたいという素朴な祈りが込められており、そこには堅苦しい理屈を超えた、暮らしの実感がにじみ出ています。時に稚拙ともいえる筆づかいの中に、かえって生き生きとした表情が宿り、見る者の頬をゆるめずにはおきません。祈りと笑い、真剣さとユーモアが同じ一枚の中に同居する、そんな懐の深さこそ、朝鮮民画ならではの魅力といえるのではないでしょうか。名もなき画工たちの筆は、身分や教養の違いを超えて、暮らしのすぐそばにあった祈りの形を今に伝えています。文字図から花鳥図、虎鵲図、そして信仰の画題まで、多彩な作品を通じてその世界をどうぞごゆっくりお楽しみください。